宮嵜守史さん(TBSラジオ「JUNK」プロデューサー)
6月某日、TBSラジオにて、現在TBSラジオ「JUNK」の総合プロデューサーとして多くの人気番組に携わり、ご活躍されている宮嵜守史さんに人物研究会がインタビューさせていただきました。
宮嵜守史さん(以下:宮)
人物研究会(以下:人)
人:ラジオプロデューサーになられたきっかけは何でしょうか。
宮:大学の掲示板にあった、TBSラジオ「こども音楽コンクール」のアルバイトの広告を見たことがきっかけです。夏休み中にできること、また、マスコミの仕事が出来ることに惹かれて始めました。楽器運びの仕事が多かったです。元々は教員になりたいと思っていましたが、大学4年生の時、地元群馬県の採用試験に落ちてしまったところを、たまたま「こども音楽コンクール」の当時のディレクターにADのアルバイトに誘われました。フリーター時代を経て、後々そのディレクターの制作会社に入りました。
人:プロデューサーになってみて、なる前のプロデューサーのイメージとのギャップはありましたか。
宮:ありませんでした。「やっぱりね。」という印象です。AD、ディレクター、プロデューサーの職務内容は全然違います。だから、自分に合っているという理由でディレクターのみずっとやっている人もいれば、順に階段を上っていく人もいます。プロデューサーはやはり、責任が重いです。
人:ポジションを争っているイメージがあったので驚きました…
宮:もちろん、狙っている人もたくさんいます。ただ、例えばADで、買い出しの仕事ばかりだとしても、工夫次第で番組のためになります。どのポジションでも、自分がリスナーやパーソナリティなど相手の立場に立って仕事をすることが基本です。
人:他のラジオ局の番組を聞きますか。
宮:聞きます。聞きながら、面白いことをやっているな、自分ならこうするな、と考えています。また、真似を防ぐため、という理由でも聞いていますね。
人:ライバル番組はありますか。
宮:聴取率を取るという意味で言えば裏番組になるでしょうね。でもそのようなことより、パーソナリティの個性を潰さないような番組作りを一番に考えています。
人:ということは、各曜日パーソナリティーによって違いを感じますか。
宮:番組の個性はパーソナリティそのものを表していると思います。自分が担当している番組全体に共通していえるのは変わらない良さがあるということです。学校や仕事など生活環境の変化で一度ラジオ(番組)から離れてまた戻ってきても、まだ同じことをやっている、という良さ。これを大切にしています。長い期間同じ番組を続けられるのはラジオの良いところだと思います。続けるにはもちろん成績ありきですが。
人:radikoができたことはどう思われますか。
宮:単純に、タイムフリーやエリアフリー機能によって聞く人が増えたことは良いことですよね。ただ、タイムフリーで聞くと、生放送ならではの良さ、深夜にやるからこそ起こる笑いが少し減ってしまうこともありますね。でも、ツールは何であれ、聞いてくれること自体がありがたいので、メリットはとても大きいと思います。
人:生放送中、スタッフさんはリスナーの見えないところで何をしているのか気になります。
宮:まずはみんな放送を聞いています。聞きながら、作家はメールをプリントアウトして、ディレクターは次の段取りを指示しながらタイムキープします。ミキサーは音を出したり音量調節をしたりしています。みんな何かしらやっていますね。
人:では、生放送中のトラブルもありましたか。
宮:たくさんあります。CDの音とびやマイク切れなどです。電話回線が落ちたこともありました。
人:そのような時はどうしているのですか。
宮:臨機応変に対応しています。CDの音とびなら、違うCDを探している間に、パーソナリティに喋っていてもらうとか。
人:TBSラジオ伝説のハプニングはありますか。
宮:私が経験したことではないのですが、スタジオのドアが壊れてパーソナリティーが中に閉じ込められたことですかね。それからスタジオの中に簡易トイレが常備されました。後は、以前使っていた6ミリテープのトラブルとかですね。
人:一つの番組を制作するのにどのようにメンバーを集めるのですか。
宮:パーソナリティーを決めて、そのパーソナリティーを面白くできる人を集めています。
人:ラジオ番組は長寿番組が多いですよね。だからパーソナリティーを選ぶのは大変そうですね。
宮:でもはじめから番組が10年続くなんて思ってないです。ボランティアでやっているわけではなくて、営利活動なので、とにかく人とお金を集める。続けよう、という気持ちでやっています。
人:ラジオは映像がないですが、だからこそ工夫していることはありますか。
宮:たくさんありますが、ひとつは過不足ない説明ですね。話を聞いていてわかりにくいと思ったら「それって誰?」とか「何歳くらいの人?」とか聞いています。逆に逐一詳細を話すことでテンポが崩れることもありますから、そこはいい塩梅を保つ必要があります。
宮:パーソナリティとスタッフ全員の努力だと思います。そしてなにより聞いてくれるリスナーのみなさんのおかげです。聞いてくれる人がいないとやっている意味がありませんからね。もちろん好きでこの仕事をしていますが、生活するために仕事をしているので、生半可な気持ちではできません。どんな仕事も一緒ですが。
人:ラジオの仕事をしていて、大学時代にやっていたことが役に立ったなと思うことはありますか。
宮:大学時代に限らず、音楽をよく聞いていたことです。
人:ラジオ業界に入るには何をすれば良いのでしょうか。
宮:何でもやっておくといいと思います。ラジオ業界は入口が狭く、入れる確率も低いので、入るために何かやらないといけないということはないと思います。
人:先ほど仰っていた、番組の変わらない良さというのは、スタッフがあまり変わらないというところからも来ているのですか。
宮:そうかもしれないですね。特にTBSラジオで放送している深夜番組は、番組の立ち上げから終了まで、よほどのことがない限りスタッフの入れ替えはしません。ある種、番組やパーソナリティと心中する文化があります。リスナーとの距離が近い分、スタッフとの距離も近いですね。良し悪しはあると思いますが。
宮嵜さんは、こちらの辿々しいインタビューにも丁寧に対応して下さいました。
感謝と共に、宮嵜さんのますますのご活躍を、人物研究会一同お祈りしています。