九十九一

 

人物研究会渉外及芸スポ部長 泉川博光

 

九十九一氏プロフィール

本名:福地隆。昭和27年11月1日、大阪に生まれる。昭和52年、元マンガトリオの上岡龍太郎氏に誘われ、漫談の勉学に励む。54年、上岡氏の紹介で坂東英二氏のプロダクションと個人契約。CBC,岐阜放送で活躍し、モノローグ調の独特の芸風で知る人ぞ知る存在に。56年上京、力試しのつもりでNTV「お笑いスター誕生」に挑戦し、10週勝ち抜く。テレビ・映画・舞台・演出・執筆と、マルチに活躍。『大人のオモチャになること』がモットーだとか。

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《対談編》

 

★「1%の閃きと99%の努力でっせ!」★

泉川 「『九十九一』っていうのは芸名ですね。どういうわけでこう名づけたのですか?」

 

九十九「(得意そうに)エジソンですよ。1%の閃きと99%の努力!すばらしいでしょ。」

 

(「ほぉ!」「すごい」等、一同感動)

 

九十九「昔、少年ジャンプの『朝太郎伝』って漫画に、九十九っていう準主役の奴がいてるんですわ。その名前を拝借させてもろうて、それに1を足したわけです。ちょうど100になりますしね。人に言うときは『1%のヒラメキ、99%の努力』ですわ。」

 

保志 「この世界に入られたきっかけは?」

 

九十九「かなり古いんですけどね、僕の従兄が関大の時、桂春朝(落語家)の友人だったんですわ。その頃僕は小学校の5年生やったんですね。よう従兄から落語ネタを吹き込まれて喜んだりしとりましたわ。自分でしょうもない小話をやっちょるうちに、人に笑うてもらいたい魅力に駆られてね…学校でもとりこになったんですわ。俺はいつかはこの世界に入ろうと思ってたんです。当時は米朝さんや三枝さんら落語ブームやったから…流行り過ぎてるんで落語家になるんも面白うないし、漫才も…芸の途中とちって、相手のせいにすんのも嫌やし…そう思って漫談をやり始めたんですわ。もしあかんかったら、踏ん切りもつくだろうと思ったんですわ。吉本に1年7ヶ月いて、追われて(師匠とソリが合わんから)、元漫画トリオの上岡さんの紹介で名古屋でラジオのDJやり始めましたし…僕の芸風の根本は一応、上岡さんのアドバイスでできとるわけです。僕は上岡さんを師匠と思うとりますし、向こうも僕を弟子と思うてますよ。」

 

泉川 「『お笑いスター誕生』については?」

 

九十九「あれは腕試しのつもりだったんですわ。あの頃B&Bがウケてたでしょ。あいつらであんだけ通じるんやったら、俺はもっとイケる、と思いましたからね。5週いきゃ御の字やったのが欲が出て、胴上げ見てたら『俺も10週抜いてグランプリ取りたいなあ』と思うようになりましたし…」

 

泉川 「上岡さんとはよく会われますか?」

 

九十九「今は電話で話をするくらいですね。元々大阪の芸人は東京を居心地のええとこと思うとりませんからね。言葉の関係もあるし、絶えず大阪は東京に対抗意識を燃やし取りますしね。その俺が東京いてるんのもはずみだったですしねえ。赤塚先生に声かけられたんが、そもそもこっちに来るきっかけでしたし。しばらく居候もしてましたしね。」

 

泉川 「日頃は大阪弁で?」

 

九十九「そうですね…酒飲んでもそうやしね。東京弁はよっぽど機嫌がようないと出ないですわ。」

 

 

 

★「大阪は『地』、東京は『見栄』の漫才や」★

桜井 「九十九さんはよく、関西のお笑いと関東のお笑いについてお話になってますね。関東のお笑いを関西じゃバカにしてるとか・・・。」

 

九十九「地質の違いですからね。関東だと私生活以外の、作りもんでやりますしね。例えば関西だと、やすっさん(横山やすし氏)なんか事件をよう起こすでしょ。それを自分の漫才ネタにしてますしね。これは東京のには絶対ないですね。他人がネタに使うことはありますけど。大阪は『地』で漫才してますけど、東京のはわりと見栄っぽい。それに東京の芸人はあっさりしてますわ。ネタを言ってウケんかったら、ポンとねたを捨ててしまいますけど大阪だと「お、笑わへんな・・・よしこれや、これや、これでもか、最後や、オメコ(笑)と、とことんやります。しつこさがありますね。」

 

泉川 「東と西と、両方の漫才師と付き合ってて、どちらが楽しいですか?」

 

九十九「うーん、甲乙つけがたいですな。東京にいる時は東京の漫才師の方が楽しいと思うし、大阪に行けばやっぱり大阪の漫才師がええし・・・。でもね、大阪で東京の漫才師と話をしてもおもろないけど、東京で大阪の漫才師と話すのは楽しいですよ」

 

泉川 「一般に東京の人間に言わせると、大阪弁ってのは粗暴で品がない、と言うんですが」

 

九十九「そうですね、東京で『ぶつ』という言葉が大阪では『どつきまわす』というように、何かこう、すごくこわいもんみたいになりますしね(笑) でも言葉が悪い反面、裏がないですね。かえって山の手言葉の方が、何か腹に一物ありそうな気がしますわ。」

 

 

 

★「これからは超ナンセンスですな!」★

富田 こういう商売は儲かりますか?」

 

九十九(ニヤッとして)もうかりまっせ」

 

富田 割はいいですか?」

 

九十九普通のサラリーマンの1ヶ月分の給料を我々は1日何時間で稼ぐんですから」

 

富田 ネタを考えてて焦ることは?ストレスとか。」

 

九十九いや、酒か女かギャンブルか、いずれかで解消しますよ」

 

富田 もしウケなくなったらどうしようとか、時代が自分を必要としなくなったらどうしようとか考えたことはありませんか?」

 

九十九「(笑) うーん、その時はまた、別のところへ切り換えてゆくつもりですからね。例えばお笑いがダメになったら芝居とか。」

 

南場 「ネタは全部自分で考えるんですか?」

 

九十九「そらそうですわ!」

 

日下 「タモリやビートたけしにライバル意識はないですか?」

 

九十九「別にないですねータモさんは自分より先に死んでゆく人だし(爆笑)、たけしは僕より先にすたれる奴ですし・・・(笑) 一番こわいのは同業で自分の後から来る奴ですな、今はいいけど。」

 

泉川 「九十九さんはいつかTVで、『僕は犬の乳で育った』とおっしゃっていたようですけれど、あれは事実ですか?」

 

九十九ケロッとして)「あ、僕は犬の乳吸うてましたよ。」

 

(エーーッ?!という声)

 

泉川 「(信じられないといった様子で)本当?」

 

九十九「飲んで益になれこそ、害にはなりません!栄養があるんですよ、犬の乳は。胃の中を洗浄する作用が強いんですよ。」

 

泉川 「お母さんのおっぱいは?」

 

九十九「いや、母は乳ガンでね(笑)」

 

泉川 「しかしまた、いったいどうして?」

 

九十九気軽に)「いや、子犬がおいしそうに吸うてるから、ついつい吸ってみたくなって・・・ふくらんでるおっぱいに対する思いっていうのが人間にはあるんでしょうな。」

 

泉川 「しかし、それにしても。」

 

山下 「おいしかったですか?」

 

九十九「無味乾燥ですな。」

 

日下 「今、飲めますか?」

 

九十九「飲め、と言われたら飲めますよ。」

 

日下 「じゃあ今度一緒に飲みましょう。」(爆笑)

 

泉川笑いながら)「ラジオのいんちきニュースの要領で、またホラを吹いているのかとおもたらなぁ・・・。」

 

九十九「ラジオ放送の間にね、ほんまのニュースが入ってきたことがあったんですわ。『ジャ、読みますよ』と言って『今朝○時頃○×で・・・』。復読しとったら、『いかん、君な、そういうニュース調で読んだら嘘に聞こえるから普通にしゃべってる感じで頼むわ』って言われましたわ。」(一同爆笑)

 

九十九「僕らがやっとるそのニュースがかえってほんまに起こっとりますからね、今は。こないだ新潟で、大麻取締法違反でバアさんが誤認逮捕された事件なんか、完全にナンセンスニュースでっせ(笑)」

 

泉川 「創作したお笑いものが実際に起こってるんですね。」

 

九十九「そうですわ。家族ネタでも僕が冗談で書いたものが実際に起こった時が2回くらいありましたね。親殺し、子殺しにしろ。こらあかん、もう少しエスカレートさせんとあかん、と思っとります。」

 

泉川 「たとえば?」

 

九十九「超ナンセンスですな、たとえば・・・家族入り乱れての近親相姦とか、オマワリと泥棒の二足わらじとか。」(笑)

 

 

★「今は第2期の根暗ブームです」★

高山 「九十九さんはよく、根暗だと言われてますが・・・。」

 

九十九苦笑いして)「あれは元々、『オレたちネクラ族』を書いた佐久間アキラっていうやつが、僕を罠にはめたんです。『本を出すからインタビュー頼む』って言うから行ってやったらあの通り。」(笑)

 

九十九「根が暗い部分はみんなもっとるからね・・・今言うてる根暗っつうのは、ダサいとか、調子乗り、陰気、センスの悪さ、地方のにおいとか、色んな要素からできとります。」

 

富田 「該当する奴がこの中にいるなあ」(笑)

 

九十九「そういう、全部含まれとるのが第1期の根暗です。単に面白がってるだけのね。最初は冗談で、言葉の遊びで言うとったんですけどね・・・今の『ねくら』は、第1期に乗れなかった連中、つまりほんまもんの控えめなねくら連中です。冗談や、と気がついてのりだしたんやから・・・いわゆる第2期の根暗ブームですな、今は。」

 

泉川 「これからどうなりますかね?」

 

九十九「マスコミもしつこいからね・・・ネタが無いもんやから長く伸ばそうとそうそうとしてますわ。来年の春までは続くんじゃないですか?」

 

 

 

★「レズっ気?あって当然やで!」★

九十九「男が結婚する時の対象で処女・非処女の問題がありますな。一般に『俺は非処女でもかまへんで』ゆうのがわりと多いでしょ。でも本音を言うたら、根本的には皆、処女を思うでしょ?」

 

泉川照れながら)「どちらかと言えば・・・そうですねえ。」

 

九十九「そうでしょ。教育していく面でも悪い癖はついとらんしね(笑) 女はそういう面で割と居直ってんのやな。非処女でも、もろうてもらえる、それなら結婚する前に遊んどかな損や!というふうな考えがあるでしょ?!」(女子大生のほうを見て)

 

女子大生「・・・。」(クスクス笑う)

 

九十九「『周りもあそんどるから』と考えてね。で遊んで、非処女でももろうてくれる。悪くても見合いがある。女のほうはすごく待遇されてまっせ!逆に男は条件的に窮屈になる。女はそれだけあそんどっても結婚をいざするとなると、背が180cm以上で経済的にどうのこうの、ハンサムでどうのこうのとね。条件を掲げるでしょ。条件にあわんと、男はボロボロに遊んでめちゃくちゃにぶっさいくで、貧乏な女を選ぶしかないでしょう。」(笑)

 

泉川 「『童貞でないとイヤ』って言う女もめったにいないでしょうしね。」

 

九十九「でもね、昔僕が付き合ってた子に『一番最初の思い出は、ロミオとジュリエットみたいなのでないといや』って言ってたのがいましたよ。」

 

泉川 「かえって気味悪いですなあ。」

 

九十九「年齢によるでしょうな、プラトニックに付き合うということは素晴らしいでっせ!レズとホモが結婚しても生活がうまくいっとる例がありますし。」

(女の子に向かって)「レズっ気ってあるでしょ?」

 

桜井・藤田「いやあ、それは・・・(笑)」

 

九十九(すかさず)「うそつけ!」

 

藤田 「どーして?」

 

九十九「ふっとした拍子にあるやろーが!例えばTVドラマで松坂慶子を見て、『あー、あんなきれいなお姉さんやったらいっぺん触られてみたいわ』とか」

 

(爆笑)

 

藤田 「そんなあ。」

 

九十九「でも、お姉さんの導き方ひとつでやっぱりのめりますよ。」(爆笑)「人間は男性ホルモンと女性ホルモンと両方もっとんやからね。レズっ気ホモっ気あって当然!」(爆笑)

 

富田 「因みに九十九さんの初体験は?」

 

九十九「17の時、相手は2つ年下だったです。」

 

(えーっ、すごい・・・という声)

 

富田 「その人は、今?」

 

九十九「どっかで結婚しとるでしょう。」(笑)

 

富田 「その時の感想は?」

 

九十九「やっぱり世界観が変わりますね。『世界は俺のために動いてるのだ』と思うくらいにね。」(笑)「学校へ行っても皆が急にガキに見えだすし。」(笑)

 

大野 「女子高生なんかどうですか?」

 

九十九「・・・視姦しますね。」(大爆笑)

 

 

 

★「アイドル歌手?見下しとりまっせ!」★

桜井 「一般に、お笑いの人たちを歌手や俳優より下に見ている風潮があるでしょ?」

 

九十九「うーん、ありますね。『人を笑わす』こと自体が低俗な雰囲気に見られてますね。イギリスやアメリカだとボードヴィリアンは歌手や俳優たちと肩を組んで歩いて当然、っていうふうになってます。文化的な差ですよ。日本だと、お笑いスター誕生はあいつらからランクを下げて見られる。これは見られてる側が当然と思ってきたからですよ。それを最初になくしたのがタモさんです。お笑いに文化を入れましたからね。文化人と渡り合ってるでしょ、でも、文化人になったらあかんし。今、変に文化人になりつつあるから・・・タモさんはこわいですね。」

 

一同 「なるほど。」

 

九十九(強い調子で)「俺ら別に(自分らは歌手より下だと)思うとりませんよ。同じ土俵で仕事しとると思ってますから。アイドル歌手から『歌を歌ってみな』て言われたら歌うたる! 振り付けも真似したりまっせ。その代わり、お前らお笑いのネタを自分で考えてやってみろ! こう言ってやりますよ。あいつらはでけへんから。俺は見下しとりますよ。」

 

桜井 「じゃ不本意な仕事って多いですか?」

 

九十九「多いですねー、今は怠慢しきっとります。いっぺん喝が入らんとねえ(苦笑) 一番ええのはライバルです。画家でも商売人でもええんですよ。出発点は同じゼロからで、どっちが先に成功するかというだけでね。たけしとタモさんみたいに、同じ世界にいるともっとええですね。」

 

泉川 「弟子はとらないんですか?」

 

九十九「メリットもないし、気を遣うだけですからね。」

 

泉川 「もし、僕が『弟子にしてください』って言ったら?」

 

九十九「うーん、契約弟子って言うんならかまわんですよ。例えば一年間弟子生活させてその間に、TV局なんかの人間に目をつけられてみろ、仕事を取ってみろ、後は知らんよ、っていう風にね。それでも昔の落語界の弟子は悲惨でしたで。子守から奥さんの腰巻の洗濯まで・・・芸も口移しでしたからね。今は待遇されてまっせ。テープレコーダーちゅう便利なもんがありますし。外弟子ゆうのもありますしね。」

 

富田 「今の大学生なんかどうですか?早稲田に限らず。」

 

九十九「女子大生は能力的に低下してますね(笑) 人が増えた分、アホもぎょうさん増えましたし。そのアホをマスコミが扇動して、一般大衆は『知らぬは親ばかりなり』と。『〇✖専攻』って言う肩書きでごまかしをきかせるんやな。」

 

藤田 「私たち皆女子大生ですけど・・・。」(いたずらっぽく笑って)「アホに見えますか?」

 

九十九「いや、賢いでっせ!」

 

泉川 「皮肉っぽいなあ。」