エスパー伊東
(以下、会見録)
人物研究会会員A(以下A)-それじゃあ、簡単なプロフィールなどの紹介からお願いいたします。これが電撃ネットワークさんのときのライブパンフレットです。
エスパー伊東(敬称略以下伊東)-なんか、人選の仕方がすごいな。人選の基準とかは?
A-それは会員の思いつくまま、思いつくままするという。
伊東-春一番が、ふふふ、慈善で来るの。奴が慈善で来るとは思えないけどね。
A-慈善ですね。
伊東―ほら、ギャラがつかないと梃子でも。
A-あー、でも来ていただけましたね。まあ、うちは熱意で来ていただいてるんで、あ、でも行ったのかな、事務所に。でも所謂偉人という人も早稲田大学の人物研究会という名前を出すと、会ってくれるんでハードルの高い人に。それが、会見活動の大部分というか。
伊東-本名。伊東マスオ。出身地、東京。本籍熊本。年齢はこの研究会と同じくらいということにしときましょう。最初っから、芸能界に入ると決めていたわけではなくて、子供のときから耽々と、その、サラリーマンじゃない世界、最初はなんか、漫画家みたいなのになりたかったのだけれど、まあ、芸能界も漫画家も自由業という意味では似たようなもので、子供の頃からやっぱり、サラリーマンじゃない仕事がしたくて。
B-最初に芸能界に入られたきっかけというのは。
伊東―二十歳ぐらいの時に大学どこも受けずに、そのままオーディション受けたり、エキストラで出たりしたけど、駄目って分かったんで、普通に勤めることにしました。恥ずかしい話、軽トラで牛乳を卸し配達するような仕事をやってて、六年間やってたの、秋葉原で。ある日急にサークルつくりにいきたいな、急に思いついたわけです。そのとき結構いい年齢になってて、まあ二十歳は過ぎていたわけだけど、それで「ムー」って言う雑誌に、超常現象研究しませんかっていう感じの、超常現象サークル、「ファイ・エム」っていうサークルを作ったのね。
A-「ファイ・エム」ですか。
伊東-ええ、それで「ムー」っていう雑誌に掲載したところ全国から二百五十通くらい入会したいっていう。実際には百通ぐらいの人と定期的にお茶会みたいなのをして、UFOとか超能力とか古代文明とかについて話し合おうって感じで、趣味でやってたんだけど、「ムー」の記事見ていろんなテレビ局が取材に来て、最初はサークルの人たちと一緒に出てたんだけど、そのうち伊東さん一人で出てくれないかって言われるようになって、それがデビューのきっかけですね。
A-それまでは超常現象とかに興味があったんすか。「ムー」を買っちゃうような感じの。
伊東-ちょっと危ないよな。今はちょっともうトーンが落ちちゃって。そのときの名残でテレビ曲が「エスパー伊東」って名前をつけたんですね。
A-じゃあ小さいときからUFOとか、そういうの好きだったんですか。
伊東-そう子供のときからそういうの、親が好きだったもので。
A-どういう親御さんだったんですか。
伊東-ミーハーでそういう不思議なことが好きな。
マネージャー-普通の家族ですよ。ぼくお会いしたことあるんですけど。
伊東-話していることは砕けすぎちゃって。
マネージャー-でもダメだししてましたね、伊東さんのこと。滑舌が悪いってお父さんに怒られてましたよ。
伊東-トークが上手ければ芸やってないですよ。
A-デビューした時はもう芸をやってたんですか。もうUFO関係ではなくて。
もう子供の頃から下地はあったんですよね。小学校の頃から漫画は常に描いてたし、びっくりショーみたいのいつも観てて、学校行って真似してやって。
A-すごくレパートリーが多いですよね。しかも無理をする芸がおおいですよね。あれはどうやって開発するんですか。
伊東-初期の頃は三ネタぐらいしかなくて。
A-三ネタというのは。
伊東-階段から転げ落ちる。それが一番初期の、十歳頃のころ開発した技。あと、鋼鉄腹筋とかいって、いろんな奴に殴らせて。子供の頃だったから大丈夫だったけど、今やったらおそらく勝ち目がないというか。最初はその三つだったけど、テレビで始めるようになってから、これはレパートリーを増やさないとテレビに出られないなと思って必死に開発したわけですね。
A-今ちなみにどれくらい。
伊東-今は百近くぐらい。
A-軽石に指で穴をあけるという技があったじゃないですか。ああいったのはどうやって開発されたのですか。
伊東-常にテレビを観てて、これできるかなということを考えて、中国の達人かなんかでレンガに穴をあけるというのがあって、あれはトリックなのかもしれない、一生懸命レンガでやってみたけれども。考えた挙句、レンガじゃなくて軽石ならできるんじゃないかっていう、それが最初。
C-今、近くで体とか見てて思ったんですけど、生傷とかいっぱいあるんですけど、今まで一番大怪我したというのは。
伊東-まあ、死にかけたことならしょっちゅう。話したらかなり量が多いから。まあ、でも人間クリスマスツリーっていうのを開発しちゃって、電機の螺旋、あの、電気を通したら感電死しちゃうらしくて。
C-体に電気を通すんですか。
伊東-コードを二股に分けて、電源差し込んで。バチっとなるよね。両手でやるってことは、体内の中がショート状態になっているということになるよね。やってみた。手はなんとか痛いけど耐えられたんです。手が耐えられるんだろうと思ったらどこでも耐えられるんだろうと思って、頭にやったら気絶しちゃって、一瞬真っ白になっちゃった。みなさん真似しないでください。死んだかとおもった。
A-それで入院したんですか。
伊東-いや入院しなかった。倒れて、もうここはやるまいと思って。
C-それ実験段階じゃなくて、本番中に。
伊東-いや、自宅です。
C-じゃあ誰も見てなかったんですか。一人で。
伊東-もしそこで死んでたら、発見したらどう思われたんだろうかって。絶対死のうと思ってやったと思うよね。
A-それ以外にもなんか、首吊り芸っていうのもやってますよね。
伊東-最近ちょっと怖くて。これも実験段階で死んでたらただの自殺にしか思われない。
A-具体的にどういう芸なんですか、首吊り芸って。
伊東-話すと長くなるかも知れないけど、昔アントニオ猪木と戦った、異種格闘技戦で、デフト・フクデットっていう選手がいて、猪木が最も苦戦した三つに入ってるんですけど、モハメド・アリ、ウィリー・ウィリアムス、その次にデフト・フクデッドがいて、最初はその人の技っていうか、イレブンPMでやってたわけ。この技見たときなんとかして俺のものにしたいなと思って、いつも首を鍛えて、もうそろそろ大丈夫かなと思ってやってみたら結構いけたんで。でも実験中に気を失いそうになったこともあって、気を失ったらそのまま絞まっちゃうから。一階フラッシュに載せられたことあって、もう限界来てるのにカメラさんいい画撮ろうと思っているから、もうちょっと耐えてくださいって。
A-不安ではないんですか。死ぬとかと思って。電極とかもつのは小学生がやってはいけませんていう。
伊東-やっぱ過信しちゃいけないのかね。なんか過信しちゃうことあって、よく親から怒られて。自分の体過信しちゃいけないって。後で老後にダメージ来るのかもしれないけど。特報王国ってありますよね。あの無謀な挑戦シリーズでも何度か危ない目にあってるので。
A-例えばどんなのがありますか。
伊東-消火器ジェットボードっていうのを考えたんだけどね。消火器の噴出力で湖面を滑れるんじゃないかと思って、サーフボードにしがみついて、一本二十キロの消火器を二本背負ってやったわけですよね。しかも真冬の群馬の湖で水温二度で、はっきり言って湖に入るだけでもすっごい冷たくてつらかったですが。いざ、やりましたが、途中でひっくり返ってしまって湖底に沈んでしまって、一応ダイバーがふたりいて助けるということだったんですが、透明度が悪くて全然見えなくて、自力で湖底はいずりまわって、その時もう死んだと思った。もうそろそろ大丈夫だろうと思って顔あげたら湖から顔が出て何とか命拾いして、でもおしりには消火器のマイナス、液体窒素だっけ、マイナス何十度というものだったんで、おしりがケロイド状態だったですね。低音火傷。で、その後その日は撤収。また別の日取り直しにした。
A-でもやったわけですね、結局。
伊東-はい。あの時はものすごい恐怖でしたね。亀状態。亀の気持ち分かりましたね、消火器四十キロの錘で。
A-保険とかは入ってるんですか。
伊東-一応シリーズの時には五千万入ってたけど。
A-でも実験とかするときの。
伊東-もうそろそろ入らなきゃいけないな。入っときましょうかね。この前、第一生命の営業行ったから第一生命の保険に入ろうかな。
B-今までやった芸でこれだけは二度とやりたくないっていうのはありますか。
A-それじゃないの。
伊東-それもいやだけど、エアバック空中浮遊というのも二度とやりたくない。車についてるエアバックありますよね、あれハンドルごとはずして、固定して、その上で座禅組むわけですよね。その爆発力で、あれ小型のダイナマイトと同じなんですよ、消化亜鉛だっけ、何だっけ、化学頭悪いから分かんないけれども、あれが爆発するわけですから。最初に熊のぬいぐるみ乗せてたんですよ。そしたら木っ端微塵に綿だらけになっちゃって、これじゃ何だかやめたいなと思ったんですけど、スタッフの人たちが来てて、そこで中止すると費用の問題とかでみんなから白い目で見られるから、やったわけですよね。驚いたな、あの衝撃は。一瞬なんか映像が浮かんだの、漫画の映像が。巨大なグローブで尻が殴られた映像が。何が起こったか分からなかったもん、一瞬。聞いたら、六、七センチ浮き上がってたらしいけど、三分ぐらい痙攣してたし、松永さんが、今ルックルックの、あの人が担当でしたから、早く救急車呼べーとか言って、お前何やってんだーとか怒鳴って、僕が息吹き返して、大丈夫大丈夫って言って。でもその日は立てなくて、担いでもらってタクシーに乗って自宅まで帰って、全治一ヶ月の怪我で。結局、尾てい骨からすごい力で圧迫されたおかげで、靭帯とか少し切れちゃって、骨折プラス打撲。今でも少し痛いもん。
A-一回きりの芸が多いですね。
D-そういった芸というのは、自分で考えてやられるんですか、それともテレビ局の人に言われてするんですか。
伊東-基本的に特報王国というのは自分で考えてやらなきゃいけないんだけど、テレビ局に言われてやったのも少しある。エアバックとかは自分で考えたもので。
A-僕エスパーさんを初めて見たのは中学ぐらいのときなんですけど、ホッチキスで耳に穴をあけるという芸、あれピアスと同じですよね。痛くないのかなと思って。
伊東-ピアスと同じだけど、ピアスって覚悟いりますよね、決心してからじわじわとやるじゃないですか。ホッチキスというのは一瞬でこう、つらいと言えばつらい。
A-外れるんですか。
伊東-ええ。あれ貧乏時代に開発した技だから。飲み屋行って全然知らない人に芸やりますから千円いただけませんかと言うわけですよね。結構くれる人がいて、いただき、とか思っちゃって。
A-血とかは出るんですか。
伊東-出ますよ。血が出なかったら人間じゃないじゃないですか。俺が血も涙もない人間だと思っているな。
A-いやいや。でも治るんですか、穴とか。
伊東-今でも少し痕が残ってますね。
A-痛くないんですか。
伊東-痛いけど、それを耐えないと芸人じゃないじゃないですか。
A-すごい壮絶な話ですね。
伊東-でも最近痛み半分になっちゃったんですよ。イメージしてるから。
A-練習とかするんですか。
伊東-そうですね。
B-例えば刺す芸の練習なんてどうやってするんですか。
伊東-手に刺してる人がいたから真似しただけ、後で聞いたら全然違うらしくて、つぼを外してやっているらしくて。俺あてずっぽうで意味もなく刺しちゃうから痛いのなんの。
A-三歳児の服を着るというのも見たことがあるんですけど。
伊東-僕のオリジナルというのは六、七割ぐらいであとは全部パクリなんで。
A-三歳児の服を着るというのも。
伊東-どこかの気功師がやってて。
E-自分で考えたけれどもこれはできないと思ってやめた芸とかありますか?
伊東-考えたけれどテレビ局にだめだって言われたのはある。セスナ機にぐるぐるに巻いて、曲芸飛行に耐えたら面白いんじゃないかって俺いったんだけど、それ酸欠になったら死にますよって言われて中止したんだ。後はこれやりたいと思っても出来ないというのはどうしてもありますね。剣のみとか、初め棒で試したんだけど、げえってなっちゃって。あ、自分で考えたやつですね。これ、スタッフと共同で考えたんだけど、小さな通信機飲み込んで通信したら面白いんじゃないかと。でも、とても苦しくて飲み込めなくて断念しましたね。結構ありますね、絶対出来ないのは。電ノコジャグラーとか。
A-体つきは結構いいじゃないですか。鍛えたりはしているんですか?
伊東-中国拳法とか気功とか空手とか。
A-それじゃあ、軽石に指で穴をあける芸というのはそれなりに自信があってやっているんですか。
伊東-指はめちゃめちゃ硬いです。それに太いんですよ、指バサミでは大体負けたことはないですね。
(会員Aと指を繋ぐ)
A-いたたたた。僕も結構力強いんですけどすごいですね。ポキポキ鳴ってますよ。指バサミっていうのはそういう技なんですか。
伊東-なんか漫画の世界とごっちゃになっているんだよね。頭の中で。『空手ばか一代』というのがあって。あれで湯飲み茶碗に指で穴をあけるというのがあるんだけれども知らないかな。子供心に出来るんじゃないかと思ったんだけれども、あ、自分が子供の頃の漫画なんだから知るわけないよな。必死にやったんだけど、出来なかった。
A-何に穴をあけるまでいったんですか?
伊東-植木鉢にヒビを入れるまではいった。
A-どういった子供だったんですか?その辺の昔話とか。
伊東-格闘漫画とかを読むとこういう風になりたいとか思うタイプで、『空手バカ一代』とか『北斗の拳』とか。
A-じゃあ小学校の頃から芸を見せるとかいうのはやってたんですか。
伊東-そうですね。でも超常現象とかいうのも。
A-じゃあ『ムー』とか定期購読してたんですか。
伊東-そう言うとなんか危ない奴みたいな。こういうタイプは一番女性にもてないんだよな、オタクみたいで。
D-『ムー』というのはでもその筋ではすごくメジャーな方ですよね。
伊東-はい。もう二十年続いてるんで。
D-『ムー』だったら有名なんで結構信頼がおけるんじゃないですかね。
伊東-ほかにも『アンダーライン』だとか『ボーダーライン』だとかあったんだけど、みんな二年でダメになっちゃって。
A-『アズ』とかもですよね。
伊東-詳しいね。よく『アズ』とか知ってるね。
A-『アズ』はもう『ムー』のパクリですよね。
伊東-でも同じ会社から出てるんですけどね。
A-オーム事件の前にオームに関する記事がよく『アズ』に載ってましたね。
伊東-うん、なんか話が合うね。
A-オームの大蔵大臣の石井ひさこが、その昔、全身タイツ姿で『アズ』に出ていたときにオームの信者は皆美人だ、という感じで。
完